健康診断とは
多くの人は、身体に何らかの症状があってから医療機関に通うことが大半かと思います。ただ病気の中には、自覚症状がなくても知らないうちに進行し、気がついた時には重度な疾患(がん 等)を発症していたケースも少なくありません。その代表的な病気として生活習慣病などがありますが、発病に気づかなかったとしても日頃から定期的に健康診断を受診し、その結果から数値の異常が確認され、速やかに医療機関へ通い、予防や治療を行うことができれば重症化のリスクは低減していきます。
このように健康診断を行うことは、自覚症状のない病気の早期発見、早期治療に努められるようになります。また生活習慣病等に罹患していなかったとしても、結果を見て日頃のライフスタイルを見直すことができれば、発症を遠ざけられるようにもなります。このほか、自らの健康状態を確認していくことは、身体に関する不安を解消していくことにもつながりますので、定期的に健診を受けられることをお勧めいたします。
健康診断と一口に言いましても種類は様々あります。その中でも法律で定められている健康診断には、40~74歳の世代の方々を対象とした特定健康診査(特定健診)というのがあります。これは1年に1回の間隔で受診することになります。なお特定健診の実施に関しては、医療保険者が主体となります。そのため、自治体の国民健康保険に加入している方には市区町村から受診のお知らせが届きます。また国民健康保険組合に加入されている方(企業に勤めている従業員 等)は、それぞれの加入されている組合から受診の案内があります。
当院で行う健康診断
特定健診
特定健診とは、生活習慣病を発症しやすいとされる40~74歳の世代を対象とし、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて行われる健康診断です。主に国民健康保険に加入されている方が受診されます。同健診の内容に関してですが、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:通称はメタボ)の判定を中心とした検査項目が揃っています。また生活習慣病を早期に発見する、あるいは早い段階で予防するという目的もあります。
なお特定健診で行われる検査項目は以下の通りです。
必須項目
問診、身体計測(身長、体重、BMI、胸囲)、理学的所見(身体診察)、血圧測定、血液検査(脂質:中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール、肝機能:AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GT(γ-GTP)、代謝系:空腹時血糖もしくはヘモグロビンA1c)、尿検査(尿糖、尿蛋白)
医師の判断に基づいて実施する検査項目
貧血(ヘマトクリット値、ヘモグロビン、赤血球数)、12誘導心電図、眼底検査
企業健診
企業健診とは、職場健診とも呼ばれます。企業に所属する従業員は、労働安全衛生法(第66条)で事業主の負担よって、医師による健康診断を受けなければならないと定められています。同健診の種類としては、一般健康診断、特殊健康診断、じん肺健診、歯科医師による健診とあります。当院ではその中の一般健康診断のうち、雇い入れの際に常時使用する従業員(労働者)を対象とした雇入時の健康診断、常時使用する従業員(労働者)を対象とした定期健康診断(1年に1回)を行っています。それぞれの検査項目については、以下の通りです。
雇入時の健康診断(雇入時健診)
事業者は常時使用する労働者を雇い入れる際は、その労働者に対して、下記の項目について、医師による健康診断を行わなければなりません(労働安全衛生規則第43条)。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、視力、聴力の検査、および腹囲の測定
- 胸部X線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 肝機能検査(ALT、AST、γ-GT)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖、またはHbA1c)
- 尿検査(尿中の糖、および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
定期健康診断(定期健診)
事業者は年に1回(深夜業や坑内労働などの特定業務従事者は年2回)以上、定期的に下記項目の健康診断を行わなければなりません(労働安全衛生規則第44条)。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、および他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、視力、聴力の検査、および腹囲の測定
- 胸部X線検査、および喀痰検査
- 血圧測定
- 貧血検査
- 肝機能検査(ALT、AST、γ-GTの検査)
- 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査(空腹時血糖、またはHbA1c)
- 尿検査(尿中の糖、および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
※定期健康診断では、身長・腹囲、胸部X線、喀痰、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、心電図の各検査については、医師が必要でないと認めた場合には、省略することができます
予防接種とは
予防接種とは、罹患すると重症化、あるいは流行しやすい感染症に罹患するリスクをできるだけ低減するために行われるものです。この場合、病原体(細菌、ウイルス 等)の病原性を極限まで抑えて作成、あるいは無力化させたもの一部を集めるなどして作られたワクチンを体内へ接種します。これによって、特定の感染症に対する免疫がつくようになるので、感染しても発症しにくい、もしくは発症しても軽度で済むようになるという効果が期待できるようになります。
また予防接種は単に個人の身を守るだけでなく、接種する方々の数が多ければ集団免疫を獲得するようになります。このような状態になれば、ワクチン接種することができない方々の市中感染のリスクも低減するようになります。このように予防接種を受けられることは、社会全体を感染症から守るという意味合いも含まれているのです。
当院で行う予防接種
インフルエンザワクチン
インフルエンザを予防しますが、同ワクチンは接種時期が重要です。日本では、冬から春の季節(12~3月)にかけてインフルエンザは流行します。またインフルエンザワクチンを1回接種することによる持続有効期間は約5ヵ月、接種後に効力が発揮されるまでに2週間程度の期間が必要とされています。そのため効果をより高めるには、流行のピークを迎える1月より少し前の12月中旬までに接種を終えられるようにしてください。
なお年齢によってインフルエンザワクチンは接種回数が異なります。13歳未満のお子様については計2回の接種が必要となります。接種間隔につきましては、1回目の接種を終えた2~4週間後の間に2回目を接種されるようにしてください。
新型コロナワクチン
新型コロナウイルス感染症を予防するためのワクチンです。令和6年4月1日以降は、定期接種扱いの方であっても費用の一部助成となるので、費用はかかることになります。
なお定期接種の対象となる方は、65歳以上の高齢者、もしくは60~64歳の方で、一定の基礎疾患を有する方としています。この基礎疾患とは、心臓、腎臓、呼吸器に何らかの機能障害がみられ、それによって日常生活に支障をきたしている方等としています。
定期接種のスケジュールに関しては、毎年秋~冬の季節にかけて1回行うとしています。費用や日程など詳細については、お住いの自治体の公式サイトをご確認ください。
なお定期接種対象外の方、定期接種の対象である方でも定期接種期間以外の時期に接種されたい方については、任意接種となります。この場合の接種費用は全額自己負担となりますが、季節に関係なく接種することができます。
肺炎球菌ワクチン
肺炎を発症する原因としては、細菌やウイルスに感染することもあれば、アレルギーによって引き起こされることもあります。その中でも最も多いのは、肺炎球菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する肺炎(成人の肺炎の2~3割程度は肺炎球菌の感染による肺炎)です。また肺炎は日本人の死因第5位の病気でもありますが、死亡者の9割以上が65歳以上の高齢者でもあります。
同ワクチンは定期接種として受けることもできます。対象となるのは、今まで1度も23価肺炎球菌ワクチンを接種されたことがない65歳の方としています。また60~64歳でこれまで1度も23価肺炎球菌ワクチンを受けたことがなく、心臓、腎臓、呼吸器に何かしらの機能障害があって、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはHIV感染による免疫機能障害で、日常生活を過ごすのがほぼ困難な方も含まれます。この場合、費用の一部が公費助成となりますが、定期接種で受けられるのは1回限定です。詳細につきましては、お住いの自治体の公式サイトをご確認ください。
なお定期接種以外は、任意接種となります。接種自体は可能ですが、費用は全額自己負担となります。ちなみに再接種を希望される方で、前回の接種から5年未満で受けた場合、注射部位に強い痛みが出ることがあるので注意が必要です。
帯状疱疹ワクチン
これまでに水痘(水ぼうそう)に罹患した方が対象となります。水痘の原因とされる水痘・帯状疱疹ウイルスは、感染による症状が治まった後も体外へ排出されることはなく、神経節に潜伏するようになります。これが過労や高齢等によって免疫力が低下すると、体のどちらか片側の神経領域に沿って、ピリピリした神経痛のような痛みと皮疹(紅斑、水疱、かさぶた 等)などがみられるようになります。これが帯状疱疹です。
同疾患による皮膚症状は、3週間程度で治まるようになりますが、ピリピリした痛みがとれないということがあります。これが発症から3ヵ月以上続くと、帯状疱疹後神経痛と診断され、この痛みをとる治療というのが必要になります。このようなリスクを低減するために行うのが帯状疱疹ワクチンになります。
なお帯状疱疹ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンの2種類あります。前者は50歳以上を対象とし、接種回数は1回です。後者は50歳以上だけでなく、18歳以上の方で帯状疱疹を発症するリスクの高い方も含まれます。この場合、計2回の接種が必要で、2回目を受ける際は1回目の接種から2ヵ月程度の間隔を空けての接種となります。
副反応に関してですが、生ワクチンでは、注射部位に発赤や痛み、腫れ、頭痛などを訴えることもあります。不活化ワクチンでは、上記のほかにも、発熱、疲労、筋肉痛などの症状がみられることもあるなど、生ワクチンよりもやや強く出るとしています。ただ生ワクチンと比較すると予防効果は高いという報告もあります。