胃カメラとは

胃カメラと呼ばれることが多い検査機器の正式名称は、上部消化管内視鏡です。内視鏡は、大きく本体装置とスコープで構成されています。スコープは本体との接続部をはじめ、操作部、挿入部に分けられます。挿入部の細長いチューブの先端には、照明(ライト)、一部採取した組織などをつかむための処置具用チャンネル、対物レンズやCCDなどが組み込まれています。

上部消化管内視鏡(胃カメラ)では、この挿入部のチューブの先端を口および鼻から挿入していくことで、食道、胃、十二指腸などの内腔の様子を観察できるようになります。これによって、病変の有無を見ることができるほか、検査中にがんが疑われる組織があれば、一部を採取して、詳細を顕微鏡で確認していきます(生検)。またポリープを発見し、切除が可能と判断すれば、内視鏡で除去することもできます。

この上部消化管内視鏡検査というのは、胃がんの早期発見に有用です。胃がんは、初期症状が出にくい病気なので放置しやすいという特徴があります。そのため病状を進行させやすく、放置が続けば転移しやすくもなります。ちなみに初期状態で発見される胃がんの多くは、胃カメラ検査によるものです。胃がんも早期発見、早期治療に努めることができれば予後は良好です。

40代から定期的に胃がん検診を

胃がん検診は各自治体で行われていますが、多くは40歳以上を対象としています。胃がんは40代を過ぎた頃から患者様が増えていきます。したがって、これまで胃に関しては何の症状もなかったという方であっても40代になったのを機に定期的に受診されることをおすすめします。なお、以下の症状などに心当たりがあれば、同検査を一度受けられるようにしてください。

胃カメラによる検査がすすめられる方

  • 喉につかえ感がある
  • 酸っぱいものが込み上がってくる(呑酸)
  • 胸やけをよくしている
  • 胃部X線検査(バリウム)の結果、異常であるとの指摘を受けた
  • 急激に体重が減少した
  • 胃に不快感がみられる
  • 黒い便(タール便)が出ている
  • 貧血の症状(めまい、立ちくらみ 等)がある など

上部消化管内視鏡(胃カメラ)による検査で発見可能な病気

咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、胃腺腫、十二指腸がん、十二指腸腺腫、食道良性腫瘍、粘膜下腫瘤、憩室、逆流性食道炎、食道バレット粘膜、食道裂孔ヘルニア、胃潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎、胃ポリープ、十二指腸潰瘍、十二指腸ポリープ など

経鼻内視鏡と経口内視鏡

先にも述べましたが、上部消化管内視鏡には、鼻から細長いスコープを挿入していくタイプの経鼻内視鏡、口から挿入していくタイプの経口内視鏡があります。それぞれの特徴は次の通りです。

経鼻内視鏡は、左右どちらかの鼻孔から直径6㎜程度のスコープを挿入していきます。この場合、舌の根にスコープが触れることはないので、嘔吐反射(オェッ)は出にくいです。したがって、苦しい思いをすることは少なくなることから、鎮静剤(セデーション)を投与せずに検査を受けることもできます。また検査中は、口呼吸になります。そのため、検査中に異常を感じたり、質問がしたくなったりすれば、医師に話しかけることもできます。

ただ経鼻内視鏡を希望されても、鼻孔が狭い、アレルギー性鼻炎の症状が強く出ている、鼻中隔湾曲症や副鼻腔炎の患者様、鼻の中で違和感があるのが苦手という場合は、経口内視鏡での検査をおすすめしています。

経口内視鏡は、従来からあるタイプの胃カメラで、口から直径10mm程度のスコープを挿入していきます。この場合、舌の根にスコープが触れるようになるので、嘔吐反射は出やすく、苦しい思いをすることになります。このような状態をできるだけ緩和できるよう、検査前に鎮静剤(セデーション)を投与していきます。これによって、検査中は意識が薄らいでいき(呼びかけには反応できる程度)、できるだけ苦しい思いしなくてすむようにしていきます。

利点としては、経鼻よりもスコープの径が太い内視鏡を使うので、モニタに映し出される内腔の様子はより見やすくなるということがあります。また、胃カメラでポリープ切除を行うケースの大半は経口内視鏡によるものです。

検査を受けるにあたって

胃カメラによる検査は、原則予約制としております。そのため、事前に外来にて診察を受けていただきます。その際に胃カメラ検査を希望であることを申し出てください。診察後、問題がなければ検査日時を予約します。その際、経鼻内視鏡と経口内視鏡、鎮静下の内視鏡のいずれを受けるか決めておくほか、常用薬や薬剤アレルギーの有無なども確認します。また感染症を調べるために血液検査をすることもあります。

検査前日~当日の注意点

前日の夕食は21時までに済ませます。それ以降は、検査が終わるまで絶食となります。なお水やお茶といった飲水に制限はありませんが、ジュース、コーヒー、牛乳などは、検査が終わるまで飲めません。

なお検査当日朝の常用薬については、事前に相談した医師の指示に従ってください。水やお茶については、とくに制限はありません。また、検査時に鎮静剤を使用される場合は、ご自身の運転(車・バイク・自転車 等)による来院は控えてください。

来院後の流れ

  1. 消泡剤を飲む 検査時に胃内を観察しやすくするため、胃の中の泡を除去する消泡剤を服用します。
  2. 麻酔の投与 経口内視鏡であれば咽頭麻酔を行い、経鼻内視鏡であれば両方の鼻腔に表面麻酔をしていきます。また鎮静剤を希望される方は、この時点で使用していきます。
  3. 検査の開始 左側臥位の状態になって、検査台で横になります(鎮静剤を投与される場合は、内視鏡を挿入する前のタイミングで行います)。経口内視鏡の方はマウスピースを装着します。この体制を維持しながら内視鏡を挿入していきます。
  4. 上部消化管の内腔を観察 咽頭から食道、胃、十二指腸の順でそれぞれの内腔を観察していきます。経鼻内視鏡であれば、検査中も医師に話しかけることができます。経口内視鏡では、鎮静剤を投与するので、意識が薄らいだ状態での検査となります。口の中に溜まった唾液は、飲み込むことはせず、口の横から流し出してください。
  5. 検査終了 観察のみであれば、10分程度で終了します。なお鎮静剤を投与された場合は、30分~1時間程度は院内でお休みいただきます。その後、検査結果の説明を医師から受けてからご帰宅となります。

検査後の注意点

胃カメラ検査を終えてからの注意点としては、以下のことが挙げられます。

  • 鼻を強くかむと出血がみられることがあります。とくに当日は控えてください(経鼻内視鏡の場合)
  • 喉に違和感が2~3日程度残ることがあります
  • 食事は検査後、1時間が経過してからにしてください(観察のみの場合)。なお食事前にまず水を飲み、むせることがなければ問題ありません
  • 生検を行った場合、飲食については医師の指示に従ってください
  • 刺激物(香辛料、アルコール 等)については、検査日から2~3日過ぎてから召し上がるようにしてください。その間は、消化の良い食事を心がけてください

大腸カメラとは

下部消化管内視鏡、あるいは大腸内視鏡と呼ばれることもあります。大腸(直腸、結腸)や小腸の一部などの内腔を観察できる検査機器になります。

内視鏡の構造に関しては、胃カメラと同様です。ただ大腸カメラは、肛門からスコープを挿入していき、上記の部位を観察していきます。その際にがん病変などが疑われる組織があれば、一部を採取して詳細を顕微鏡で調べます(生検)。また大腸でポリープを発見した場合ですが、これはがん化する可能性も考えられます。そのため切除ができると判断すれば、内視鏡で取り除くということもあります。

なお大腸がんは、発症初期は自覚症状がなく、気づきにくいという特徴があります。ただ早めに発症に気づいて治療を行なえば予後は良いです。40代から患者数が増加していきます。なお多くの自治体では40歳以上の方を対象に大腸がん検診を実施しています。その場合、便潜血検査が大半ですが、検査結果が陽性であると判定されたのであれば、速やかに大腸内視鏡の検査を受けられるようにしてください。また以下の症状などに心当たりがあり、40歳を超えているという方も大腸カメラによる検査を定期的に受けられるようにしてください。

大腸カメラによる検査がすすめられる方

  • 便潜血検査の結果、陽性と判定された
  • 血便が出ている
  • 便秘や下痢を繰り返している
  • 慢性的に便秘である
  • これまでに大腸ポリープや大腸がんの手術を受けた
  • 腹部にハリを感じている
  • 急激に体重が減少した
  • 貧血が長い間続いている など

下部消化管内視鏡(大腸カメラ)による検査で発見可能な病気

大腸ポリープ、大腸がん、大腸腺腫、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、大腸憩室症、虚血性腸炎、赤痢アメーバ、腸結核、偽膜性腸炎、痔核 など

まず外来にて診察をいたします

大腸カメラの検査を希望される場合、一度当院の外来をご受診ください。その際は、どんな症状があるか、既往歴、常用薬の有無などもお聞きします。診察の結果、大腸カメラの検査が可能となれば、日時を予約します。必要であれば、血液検査(感染症の有無等を調べる など)を行ないます。また、検査にあたっての注意点、常用薬によっては休薬や中止が必要となるケースもあるので、それらの説明なども行います。

検査前日~当日の注意点

前日の夕食は21時までに終えるようにしてください。できるだけ消化の良い食事(うどん、おかゆ、具がないスープ 等)をとるようにします。なお食物繊維が豊富な海藻類やきのこ類のほか、キウイやみかん、イチゴなど種の多い果物は避けるようにします。21時以降は、検査を終えるまでは食物を口にしません。飲み物に関してですが、お茶や水に関しては制限されることはありません。ただし、牛乳、コーヒー、ジュース、アルコール(飲酒)等は検査に影響が及ぶおそれがあるので飲まないようにしてください。また必要であれば、前日から下剤を飲むこともあります。その場合は指示通りに服用します。

検査当日の朝は絶食になります。なお水分については、水やお茶であればとることに問題はありません。9時頃より、腸内を観察しやすくするために腸内洗浄液を使用します。この場合、コップ一杯分を10~15分程度かけて飲んでいきます。この後、何度もトイレで排便していきますが、便の色が透明になるまで繰り返します。透明の状態になれば検査可能となります。午後の診療開始時間とともに検査開始となりますので、指定された時間に来院ください。なお検査時に鎮静剤(セデーション)を使用される場合は、当日のご自身による運転(車・バイク・自転車 等)はおやめください。

来院後の流れ

  1. 検査前準備 午後の診療開始時間とともに検査開始となります。来院後、検査衣に着替えます。
  2. 鎮静剤を投与 鎮静剤を希望される方には、内視鏡(大腸カメラ)を挿入する前の段階で投与いたします。これによって、検査中は意識が薄らいだ状態になるので、苦痛は和らぐようになります。
  3. 内視鏡の挿入 左側臥位の体勢になって横になります。肛門から内視鏡を挿入していきます。その際に空気も一緒に入ることがあります。これが腹部のハリを訴える原因となります。そのため、当院では挿入時に腸管に吸収されやすい炭酸ガスを送気し、できるだけ苦痛を感じにくい環境にも努めております。
  4. 検査の開始 検査時は大腸(直腸、結腸)の内部の様子を中心に小腸の一部や盲腸も観察していきます。がん病変などが疑われる組織があれば、内視鏡で一部を採取して顕微鏡で詳細を調べる検査(生検)をします。また切除可能なポリープを発見した場合は、その場で取り除くこともあります。
  5. 検査終了 検査時間は、観察のみであれば15~30分程度です(個人差はあります)。鎮静剤を使用した場合は、30分~1時間程度は院内でお休みします。また検査後は、医師から腸内の様子の説明を受けてから、ご帰宅となります。生検を行った場合は、結果は後日となるので、数日後に説明を聞きに来院します。

検査後の注意点

大腸カメラによる検査を終えてからの注意点としては、以下のことが挙げられます。

  • 検査後の食事は検査を終えてから1時間が経過してからにしてください
  • 生検を行った場合は、できるだけ消化の良い物を食べ、刺激物(アルコール、香辛料 等)は控えてください
  • 腹部のハリについては、おならをどんどん出していくことで改善されるようになります
  • 組織の採取やポリープ切除をした場合、検査後間もなくは、激しい運動は控え、入浴はシャワー程度にしてください
  • 検査後の排便で少量の血が便に混じることはあります。ただ出血量が多い、出血が止まらない、痛みがあるという場合は、遠慮なくご連絡ください